思考のクセや価値観を「ほどく」ことで、
それまで当たり前のように信じてきた「正しさ」や「自分らしさ」が、少しずつ揺らぎ始めます。
この揺らぎは、多くの場合、不安や迷い、不確かさとともに現れます。
けれどドリフトシンキングでは、この「揺れ」こそが、内面が新しく動き始めている証だと捉えます。
揺れは「変化の入り口」
「迷惑をかけてはいけない」と思い込んでいた自分が、
「それでも、自分を大切にしたい」と感じ始めたとき。
そのあいだには、心の揺れがあります。
- 「でも嫌われたらどうしよう」
- 「そんな自分は甘いんじゃないか」
- 「よくわからないけど、なんとなく落ち着かない」
こうしたモヤモヤとした感情や身体感覚は、
いままでの「正しさ」がゆるみ、新しい選択肢に向かおうとするときに生まれる自然な反応です。
つまり、揺れは、変化しようとしている心のサインなのです。
揺れることは悪いことではない
現代社会では、「ブレない自分」や「一貫した態度」が美徳とされがちです。
そのため、心が揺れ動くことに対して、どこかネガティブな印象を抱いてしまうことがあります。
けれどドリフトシンキングにおいては、揺れはむしろ、感性が回復し始めた証拠です。
執着が強く働いているとき、感情や感覚は硬直して動きにくくなっています。
それがほどかれたとき、ようやく心が再び動き出す——
その初動が、揺れとして現れるのです。
他者との関係に現れる揺れ
この「揺れ」は、特に他者との関係性の中で強く感じられることがあります。
たとえば:
- 本音を言いたいけれど、拒絶されるのが怖い
- やりたくないけど、断るのが申し訳ない
- 自分の思いに正直になると、関係が壊れるかもしれない
こうした揺れは、感情と感情がぶつかる接点に生まれます。
そこには、相手との間だけでなく、自分の内面同士の対話も含まれています。
揺れを眺めるという選択
揺れているときに大切なのは、「どうにかしよう」と急がないこと。
むしろ、「ああ、自分はいま揺れているな」とそのままを眺めることです。
- 感情が定まらない
- 気持ちが日々変わる
- 身体が重かったり、落ち着かなかったりする
これらを否定せず、責めず、「いまはそういうとき」と受けとめること。
それが、ドリフトシンキングの第二段階「眺め、離れる」の入り口でもあります。
揺れの先にあるエネルギー
不安定さのなかには、あたらしい動きのエネルギーが眠っています。
揺れを否定せずに見守ることで、やがてその揺れが収束し、
新しい自分らしさの感覚が自然と生まれてくることがあります。
その感覚は、次のステップである「ゆるす」ことへとつながっていきます。
次回予告:「ゆるす」へ
次回は、この「揺れ」の中で見えてきた自分の未熟さや弱さ、
「こうありたい」と思っていた理想像とのズレを、どうやって受けとめていくのかを探ります。
ゆるしとは、あきらめることではなく、
自分と新しい関係を築き直す、しなやかな感性の始まりです。