現代社会の忙しさの中で、私たちは自身の内面に鈍感になりがちです。そんな時代だからこそ、私は「ドリフトシンキング」を提唱し、内面に静かに目を向け、感情や感覚・思考をゆったりと味わい直すことの重要性を伝えています。ドリフトシンキングは、心の動きを無理に抑えるのではなく、正直に受け入れ、自分自身との穏やかな関係を築くことを目指すものです。
ドリフトシンキングで感情に丁寧に向き合う上で、感情には3つの大切な性質があることを理解することが役立ちます。
一つ目は「変容性」:感情は天気のように絶えず繊細に形を変え、同じ状態が続くわけではありません。この変化に気づけば、たとえ強い感情もいつかは過ぎ去ると理解でき、穏やかに距離を取りやすくなります。
二つ目は「相互作用性」:感情は単独ではなく、思考(価値観や習性)や身体感覚と絶えず繊細に絡み合っています。不安の背後に「失敗してはいけない」という思考や体の緊張があるように、これらは互いに影響し合います。感情、感覚、思考(価値観や習性)の絡み合いに気づくことが、ドリフトシンキングの第一段階「気づく・感じる」の重要なステップです。
三つ目は「階層性」:感情には複数の層(レイヤー)があり、表層の激しい感情から、中層の数時間から数ヶ月単位の感情、そして深層の穏やかで安定した慈しみや安心感まで、層を成しています。普段は気づきにくい深層の感情は、私たちの根底から人生を支えています。
これらの感情の「変容性」「相互作用性」「階層性」という3つの側面を丁寧に理解し、ドリフトシンキングを通じて感情、感覚、思考に「気づき、感じる」ことは、自己理解を深める鍵となります。内面から一歩離れて自身をやさしく穏やかに見つめ直すことで、感情に翻弄されることが減り、より深く、穏やかに内側を眺められるようになるのです。
感情は多様で奥深いものです。その3つの側面を知り、自身の内面と丁寧に向き合う旅は、本当の豊かさ、幸福感につながるでしょう。日々の心の揺らぎにそっと目を向け、自分自身の心に穏やかな確信と自信を抱けるようになることを願っています。