ドリフト・シンキングを実践する上で、何よりも大切なのは「自分自身の心の内側に静かに目を向けること」です。心に浮かぶ感情や感覚、思考、そして無意識の「習性」や「価値観」。これらの内面の動きは、放っておくと曖昧なまま、なかなか捉えにくいものです。
そこでおすすめしたいのが、それらを「言葉」や「イメージ」として表現し、さらに「自分なりの名前(ニックネーム)」をつけてみること。これは、内面の動きに“輪郭”を与え、より具体的に捉えるための有効な方法です。
たとえば――
- 先の見えない不安を「樹海の森」と呼んだり、
- 完璧主義な自分を「ゴリゴリアスリート」と名付けてみたり、
- 私自身、環境を大きく変えたくなる性質を「あじへん」、腰を据えてのめり込む感覚を「堅あげ」、失敗が怖くなるアホな状態を「フル(全身)デニム」と表現してきました。
こうして自分にしっくりくる言葉や名前をつけることで、それは「自分自身そのもの」ではなく、「自分の中で現れるパターン」として客観的に見られるようになります。まるで嵐の中心から一歩離れて、嵐そのものを静かに観察するような感覚です。内面のパターンと自分自身との間にささやかな距離が生まれ、その存在に圧倒されることなく、冷静に向き合う余裕がもたらされます。
さらに、ニックネームをつけることで、自分自身のなかの小さな変化にも気付けるようになります。「昨日よりも大きい」「今日は色合いが少し淡い」など、微妙な違いも意識しやすくなります。
この「名前付け」のプロセスは、自己理解をより深めるための大きな助けとなります。自分の「色眼鏡」や「習性」に気づき、それが外の出来事ではなく、自分自身の内側から生じていることを認識しやすくなるのです。こうした深い自己認識こそが、外からの欲望やノイズに振り回されず、「自分らしい生き方」へと進むための土台になるのです。