現代社会に生きる私たちは、どうしても外側の世界に意識を向けがちです。目に見える成果、他者からの評価、絶え間なく流れてくる情報…。「もっと成功しなくては」「人から認められなければ」と、外からの期待や刺激に応えようと必死になるほど、自分自身の心の内側が今どう感じているかは、置き去りになりやすいものです。
私自身、かつて起業家として「行動こそすべて」と外へ外へと力を注ぎ、外部環境を整えることに奔走しました。しかし、どんなに懸命に努力しても、予測不能な現実に直面し、開発の遅れや人間関係の困難にぶつかるたび、内なる苦しさや違和感が膨らんでいきました。その時痛感したのは、内面の不安定さを無視したままでは、どんなに外側を良くしようとしても、心からの安らぎは得られないという真実です。むしろ、状況が少し変わるたびに、満たされない欲望や新たな執着が生まれ、心はかえって不安定になってしまうのです。
真の豊かさや幸福は、単に外側の条件が満たされることではなく、それを自分の心がどう受け止め、どう感じるかという内側の世界に深く根ざしています。私たちの苦しみやストレスは、しばしば外の出来事そのものから生まれるのではなく、自分の内なる「色眼鏡」や「習性」といった心のパターンによって生み出されていることが多いのです。
だからこそ、何かを追い求める前に、まずは内面から丁寧に見ていくことが何よりも大切なのです。
ドリフト・シンキングは、この内側への新しい思考術です。心に浮かぶ感情、感覚、思考、その「動き」に静かに気づき、感じ取る。そして、そこから少し距離をとり、客観的に眺め、離れる。無理に外をコントロールしたり、欲望を叶えようとしたりするのではなく、内面を深く理解し、心の声に耳を澄ませることで、自分本来の自発的な「駆動力」に気づくことができます。
外側の努力も大切ですが、まず内側を耕し、心の土台を安定させることこそが、欲望に振り回されず、真に自分らしく、穏やかな生き方へと繋がっていくのだと信じています。
さあ、まずはあなたの心の内側にそっと目を向け、その声に耳を傾けてみませんか? きっと、まだ知らなかった自分との新しい出会いが待っています。