「もっと自分らしく生きたい」と願ったことが、あなたにもあるかもしれません。
けれど、そう願えば願うほど、どこかで無理をしていたり、何かに縛られていたりする自分に気づくことはないでしょうか?
“自分らしさ”を大切にしようとするその思いの奥に、実は知らず知らずのうちに根を張っているもの——
それが「執着」です。
ドリフトシンキングが目指すもの
ドリフトシンキングが目指しているのは、執着を否定したり、感情を制御したりすることではありません。
大切なのは、「気づく・感じる」そして「眺め、離れる」という、ごくシンプルなステップを通して、
内面と柔らかくつきあう感性を育てることです。
たとえば、
「いま、私は緊張しているな」
「胸のあたりが少し苦しいかも」
そんなふうに、感情や感覚にそっと気づき、
その状態から少しだけ距離をとって静かに眺めてみる。
このようなほんの小さな動きだけで、心に変化の兆しが訪れることがあります。
そしてその瞬間こそが、「漂う」という在り方のはじまりなのです。
内面の旅には道がある──でも、それは必ずしも順番通りではない
この連載では、「見つめる」「ほどく」「揺れる」「ゆるす」「遊ぶ」という5つのステップを紹介していきますが、それは「順番に正しく進むべき階段」ではありません。
むしろ、「見つめる」ことを丁寧に行うことで、
その先にある「ほどく」や「揺れる」といったステップが、
自然とやってきて、あるいはごく小さな壁として通り過ぎていくこともあります。
しっかりと内面を見つめ、感情・思考・感覚に気づききることができれば、
そのあとの過程は、思っているよりも軽やかに通り抜けられることがあるのです。
この連載では、あえて各プロセスを一つずつ丁寧に扱いますが、
それは「すべてを踏まなければいけない」という意味ではありません。
むしろ、こうしたプロセスを知っておくことで、
ドリフトシンキングが大切にする「気づく・感じる → 離れる」という
シンプルなステップへの理解と実践が、より繊細で確かなものになると考えています。
全6回の構成と主なテーマ
このシリーズでは、以下の6つのステップを通じて、「執着」と「自分らしさ」にまつわる内面の旅を辿っていきます。
- 見つめる:自分らしさの奥にある“執着”
感情の表層・中層・深層にまたがる執着を観察し、それが自分らしさにどのように結びついているかを見つめ直します。 - ほどく:なぜ私たちはそこまでこだわるのか?
執着の背景にある思考のクセや価値観を言語化し、内面の構造を静かに紐解いていきます。 - 揺れる:執着がほどけるときの内面の駆動
執着が緩んだときに現れる内面の揺れ。それを否定せず、感情の自然な動きとして受けとめていきます。 - ゆるす:自分を縛っていた「理想」との対話
自分の揺れや未熟さをそのままに許す。そこにある「理想」と優しく向き合う視点を育てます。 - 遊ぶ:「自分らしさ」をもっと自由に使うために
再構成された「自分らしさ」は、かつてのように堅苦しいものではなく、柔軟で創造的なものとして現れてきます。 - 漂う:執着をハンドリングする感性と思考法
連載全体を振り返りながら、「漂う」という在り方が自然に育まれていたことに気づきます。ここからはじまる新しい日常への構えとして、漂うことを再確認します。
この連載でご一緒したいこと
このシリーズは、「感情に巻き込まれないために我慢する」ものではありません。
むしろ、感情を感じきり、眺め、離れることによって、感情とともに生きる力を養うためのものです。
そして、その力はきっと、あなた自身がもっと自由に、しなやかに生きるための支えになるはずです。
どうぞ、あなたなりのペースで、この内面の旅路をご一緒いただけたら嬉しく思います。