これまでに紹介してきた「PayDrift(支払いを通じて自分の価値観を知る)」「FeedDrift(情報摂取の癖を観察する)」「DriftEssay(言葉にすることで思考の流れを見つめる)」の3つは、いずれも“日常の行為”を通じて、内面の流れに気づく実践でした。
今回のテーマは「ドリフト・ダイエット」。これは、「食べたい」という衝動と丁寧に向き合いながら、自分の感情・思考・感覚の奥にある内なる声を見つめていくためのアプローチです。
ダイエットの「本当の壁」は内面にある
誰しも一度は「ダイエット」に挑んだ経験があるかもしれません。体重を減らす、食事を減らす、運動を増やす——従来のダイエット法は、外面的な行動管理にフォーカスしがちです。
しかし、ダイエット中に立ち現れるのは「空腹」「イライラ」「焦り」「孤独感」など、さまざまな“内的な反応”です。そして、これらを我慢や気合いだけで乗り切ろうとすると、反動で食べ過ぎてしまったり、続かなくなったりするという経験は、多くの人にあるはずです。
「感じて、寄り添う」ドリフト的アプローチ
ここで、ドリフト・シンキングの視点を応用します。ドリフトとは、自分の感情や思考、身体感覚の流れをコントロールせず、評価もせず、ただ静かに観察し続ける態度のことです。
ドリフト・ダイエットでは、空腹や食欲を「抑える対象」ではなく、「じっくり観察すべき感覚」として扱います。たとえば、空腹感の背後にある寂しさや不安に気づくことで、それが単なる生理的欲求ではなく、心理的な満たされなさと結びついていることが見えてきます。
やり方はとてもシンプル
ドリフト・ダイエットの実践は、以下のようなステップです。
空腹や衝動を感じたとき、まず意識をそこに向けて「感じる」。
その感覚から浮かぶ感情や思考にも気づいていく。
繰り返し出てくる内面のパターンに名前をつけてみる。
その感情の流れに寄り添いながら、自然に落ち着いていくのを待つ。
このようなプロセスを繰り返すことで、ただの「食欲との戦い」だったダイエットが、自分を深く知るための「内的探索の旅」に変わります。
食欲だけでなく、日常の「余剰」もダイエット対象に
ドリフト・ダイエットは、「食べすぎを抑える」だけにとどまりません。たとえば、無意味にスマートフォンを触る癖、続けたくない人間関係、義務感だけで計画された旅行——こうした「生活の中の余剰」もまた、ダイエットの対象と捉え直すことができます。
内面を見つめ直すことで、自分にとって本当に必要なものと、手放してもよいものの境界が見えてくるのです。
痩せることを超えて「自分とつながる」
ドリフト・ダイエットの目的は、単に体重を落とすことではありません。自分の欲望や価値観と向き合い、自分がどんなふうに感じ、考え、生きているかを丁寧に探ることにあります。
その結果、「なぜ食べたいのか?」という問いをきっかけに、自分本来の生き方や心の豊かさへと静かにたどり着くことができるのです。